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一番しわいのはランナーではなかった。 ~広島県の田舎町で行われる88kmを走る「しわいマラソン」~【前編】

みなさんはしわいマラソンの中にある「しわい」という言葉を聞いたことはありますか?

しわいとは、このあたりの地域の方言で「しんどい・苦しい・厳しい・つらい」という意味があります。別の地域では違う意味で使われることもあるそうです。そんな名前が付くマラソン大会、一体どう「し・わ・い」のでしょうか?

想像するだけでも大変そうなマラソン。見ている方もランナーさんが自分の限界に挑戦している姿からは、勇気や力をもらえますね。

今回は、しわいマラソンの誕生秘話と、それを誰に応援されることもなく陰で 支え続けてきた一人の男の世界をご紹介していきます。

「西中国山地の雄大な自然」と「地域の優しさ」に包まれて走るしわいマラソンとは?

この大会は、安芸太田町の雄大で美しい自然の中で行われます。ただ普通のマラソン大会とは異なりとにかくしわいんです。しわいとは、 しんどい・苦しい・厳しい・つらい という意味でしたね。

全国でも屈指のマラソン大会とも言われているしわいマラソンは、西中国山地特有のアップダウンのあるタフな地形の中、88kmの距離を走ります。

またコース内の一番高い場所と低い場所の標高差は、なんと854mもあります。またランナーの方なら気になる累積標高差は2,225mで、制限時間は13時間という中、己の精神と向き合いながら足を一歩ずつ進めます。

左下に小さく人が見えますか?これがランナーさんです。「何、この風景?」という方は後で分かりますのでご安心ください。

「マラソンをあまり知らない」という方のための豆知識

マラソンと言えば42.195kmをイメージする方が多いと思いますが、それ以上の距離を走る競技をウルトラマラソンといいます。

しわいマラソンは、88kmを走るのでウルトラマラソンということですね。そのコースの舞台となるのが、広島県の北西部に位置する安芸太田町です。

はい、山ですね。

こちらが実際のコースマップ。

安芸太田しわいマラソン88kmのコースマップ(しわいマラソン公式サイトより)
町の中をぐる~っと1週するということですね。

第1回大会から続く88kmを走る元祖しわいコースとなります。

この他にも88kmコースを10時間以内で完走した方にのみ挑戦権が与えられる100kmコースがあります。

なぜこんなハードなマラソン大会が西日本の広島県北西部にある小さな町、安芸太田町ではじまったのでしょうか?

それは十数年前に地元の有志が集まり語ったことが始まりでした。

安芸太田町を好きになってほしい、ただその想いだけで始まった

十数年前のとある日に、マラソン経験のない地元有志メンバーが集まりました。

その中で全国の方々に「安芸太田町を好きになってもらいたい」というテーマで何ができるのかを語り合いました。

様々なアイディアがあがったそうですが、その中で導き出されたひとつの答えが、「他の市町にはないウルトラマラソンを開催すること」ということでした。今でこそウルトラマラソンを知っている方は増えましたが、十数年前はまだ少なかったです。

どこにもないマラソン大会をして全国の方々に安芸太田町に来てもらい、知ってもらい、自然や人にふれていただき、好きになってもらいたいという気持ちからスタートしました。

第1回大会をなんとして開催するために何度も試走を行い、コースの設定を行っていきました。その他にも、ランナーのみなさんにどうやったら来ていただけるか?喜んでいただけるか?など毎年反省を改善点へとつなぎここまでやってきました。

毎年エントリーの数も増え、全国各地にファンも増え毎年参加してくださるランナーさんもいる大会へと成長していきました。

過酷な道のりがくコースだが、やさしく包み込んでくれる大自然と地元の人々

広島県や近隣の地域の方は安芸太田町のことをご存じの方が多いとは思いますが、関西圏や東日本の方は知らない方もいると思うのでどういった町でどんな自然があるのかを簡単にご紹介していきます。

コースは全長で88kmもあるので、全部をご紹介するととてもしわいので、ポイントを押さえながら見ていきましょう。

安芸太田町とは、広島県の北西部にあり、水流豊かな太田川の恵みを受けて、暮らしが育まれた里山で、どこか懐かしさを抱く景色が残る町です。

町の人口は約6000人で、高齢者も多く住む町。たくさんの生きる知恵が今でも残る町。

安芸太田町は、自然のフィールドが多種多様です。

広島の玄関口である広島インターチェンジから約30分とアクセスが良く、週末になればスポーツやアウトドアを楽しみに各地域から人々が集まります。

キャンプやトレッキング、サイクリングからツーリング、冬になれば良質な雪も降るのでスキーやスノーボードなどのフィールドが多彩で、1年を通して様々なアクティビティが楽しめます。

では、実際にある自然の表情を見ていきましょう。

安芸太田町で出会うことのできる自然の表情とは?

しわいマラソンのスタートとゴール地点になるのは、広島県でも人気の観光地「温井ダム」です。

アーチ式のダムの中では、黒部ダムについで2番目の高さ(156m)を誇る「温井ダム」、ダム湖のことを「龍姫湖」ともいいます。

この他にも安芸太田町には様々な自然の表情があります。多くのハイカーに愛されている草原の麗峰「深入山」
<スタート地点から約20~30km>

山頂からは山なみが360度の大パノラマの景色を見渡せて、天候の良い日には日本海を見渡すことができます。

夏はキャンプに、冬はスノースポーツが楽しめる広島県最高峰の山「恐羅漢山」
<スタート地点から約30~40km>

そして、折り返しの40kmを過ぎて内黒峠を下り終えると、峡谷内はコースではありませんが、国の特別名所「三段峡」となります。
<スタート地点から約50km>

西日本有数の「峡谷凝縮美」が楽しめる全長16キロの大峡谷。フランスの旅行誌ブルーガイドでは三ツ星を獲得、毎年多くの方が訪れます。

その後、ハイキングやキャンプなども楽しめる「龍頭峡エリア」へ続き、多くのランナーが毎年苦戦する「井仁の棚田」へ登ります。しかし、登り切った後の棚田の絶景はご褒美なのであきらめずに頑張ってくださいね。
<スタート地点から約60~70km>

アメリカのCNNの特集「Japan’s 34 most beautiful places(日本の最も美しい場所“34選”)」にも選ばれた場所

井仁の棚田を過ぎ下っていき、191号線へ出ると広島県の川「太田川」と出逢います。川沿いの気持ち良い風を感じながら走ります。


かつては電車が走っていたいくつかの駅前を通り、加計の商店街を通り、数時間前にスタートしたゴール地点の「温井ダム」へと向かいます。

そして、毎年ランナーさんを苦しませる、しわいマラソン最後の難関へ向かいます。

その名も「しわい階段」です。これを乗り越えないとゴールにはたどり着けません。

最後の難関、156mの巨大なアーチ式ダムの横にある481段の階段

このしわい階段についても詳しくお伝えしたいのですが、前編はここまです。

最後にご紹介した難関「しわい階段」の正体や大会を支える地域の人たち、また最初にもお伝えした、しわいマラソンを支える一人の男性の世界については《後編》で見ていきましょう。実はその世界、しわいマラソンを走るランナーさんよりもしわかったんです!いったいどんな世界なんでしょうか?

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